2017年に起きた火災の9.0%が放火でした。
2017年は火災原因ランキング2位でしたが、1997〜2016年の20年間は放火が火災原因ランキング1位でした。
ただ、放火の被害者はこんなにも多いのに、放火犯の賠償責任について知っている人は少ないです。
そこで今回は、放火犯の賠償責任について徹底解説いたします。
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1.放火犯には賠償責任あり
放火犯には、火事によって生じた損害の賠償責任が生じます。
放火犯は、自らの意思で火事を起こしたわけです。放火された人がプライベートや仕事で恨みを買っていたとしても、関係ありません。恐怖を味わった慰謝料も請求できます。
また、もらい火による火事でも原因が放火なら損害賠償請求が可能です。もちろん慰謝料も請求できます。ただし、火元が一番の被害者であるため、火元より慰謝料の金額は少なくなります。
※火元への損害賠償請求はできません。詳しくはこちらをご覧ください!
知らなかった!もらい火による火事は損害賠償請求できない!?
2.放火犯と裁判する?それとも示談する?
放火犯への損害賠償請求は、民事裁判をしなくてはいけません。ただ、放火犯が応じるのであれば、裁判開始前または裁判の途中に示談をする選択肢もあります。
「判決が出るまで裁判をする場合」と「示談をする場合」では、受け取れる金額と支払いが命じられるまでの期間が異なります。
2-1.判決が出るまで裁判をする場合
裁判所から放火犯へ賠償金と慰謝料の支払いが命じられます。
下記の3点をご説明いたします。
1.支払いが命じられるまでの期間
2.賠償金額
3.慰謝料相場
4.判決が出るまで裁判した方がいいケース
2-1-1.支払いが命じられるまでの期間
裁判所から賠償金と慰謝料の支払いが命じられるまで、火災発生から1年〜1年半かかります。
刑事裁判で放火犯に有罪判決が出た後に、損害賠償請求の民事裁判がおこなわれます。有罪判決が出るまでは、放火犯は容疑者です。放火したとは断定できないため、損害賠償請求の裁判ができません。もし、殺人も絡んでくる放火事件の場合、刑事裁判の判決が出るのに時間がかかるため、損害賠償請求の民事裁判も長引きます。
ただ、放火の決定的な証拠を提出できる場合は、刑事裁判と並行して民事裁判をできるため、半年〜1年で賠償金・慰謝料の支払いが命じられるでしょう。
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2-1-2.賠償金額
家財・住宅の損害額が賠償金として支払われます。
なお、保険会社から保険金が支給されている場合は、保険でカバーしきれなかった損害が賠償金として支払われます。
※被害者に支給した保険金額を、保険会社は放火犯に損害賠償請求します。
保険会社から支給される保険金額はこちらをご覧ください!
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注意点
損害額は新品購入価格ではありません。火災直前の時価です。買い替え費用に達さないケースがあります。
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2-1-3.慰謝料相場
20〜100万円が慰謝料として支払われます。
命の危険を脅かされない限り、半焼以上でないと慰謝料の支払いは命じられません。
半焼の場合の慰謝料相場は20〜50万円です。全焼の場合の慰謝料相場は50〜100万円です。
なお、火事によって人が亡くなっている場合は、上記の慰謝料に加え、200〜300万円が加算されます。
2-1-4.判決が出るまで裁判した方がいいケース
下記のいずれかに当てはまる場合は、判決が出るまで裁判した方がいいでしょう。
1.刑事裁判が1年以内に終了しそう
2.放火犯から示談の申し出がない
2-1-4-1.ケース1:刑事裁判が1年以内に終了しそう
刑事裁判が1年以内に終了しそうなのであれば、判決が出るまで裁判した方がいいでしょう。
一般的に示談金よりも賠償金の方が多くの金額を受け取れます。刑事裁判が1年以内に終了するのであれば、民事裁判は火事発生から1年半以内に終了します。示談でも長ければ、10ヶ月近くかかるケースもありますので、判決を待って、賠償金をもらうのがいいでしょう。
2-1-4-2.ケース2:放火犯から示談の申し出がない
放火犯から示談の申し出がない場合は、判決が出るまで裁判した方がいいでしょう。
示談にしたくても、放火犯から申し出がないのであれば、被害者から示談の申し出をしなくてはいけません。その場合、被害者がお願いしている立場になるため、示談金を低くされる可能性があります。
2-2.示談を選択する場合
裁判所から放火犯へ示談金の支払いが命じられます。
下記の3点をご説明いたします。
1.支払いが命じられるまでの期間
2.示談金額
3.示談を選択した方がいいケース
2-2-1.支払いが命じられるまでの期間
「裁判開始前の示談」と「裁判途中での示談」で、火災発生から示談金の支払い命令が出るまでの期間は下記の通りです。
裁判開始前の示談:〜3ヶ月
裁判途中の示談:6ヶ月〜1年
2-2-2.示談金額
家財・住宅の損害額の50〜120%が示談金として支払われます。
示談金を支払っておくと刑事裁判での判決が軽くなるため、裕福な放火犯であれば損害額以上の示談金を提示してきます。
2-2-3.示談を選択した方がいいケース
示談を選択した方がいいケースは下記の3つです。
1.裁判開始前に放火犯から示談の申し出がある
2.刑事裁判の長期化
3.仕事が忙しくて裁判どころではない
2-2-3-1.ケース1:裁判開始前に放火犯から示談の申し出がある
裁判開始前に放火犯から示談の申し出がある場合、「刑事裁判の判決を軽くしたい」という思惑があるため、示談金を高く設定できます。損害額の70〜120%が示談金として支払われるでしょう。その上、火災発生から3ヶ月以内に示談金が支払われます。時間的負担が少ないに高額な示談金を受け取れるでしょう。
2-2-3-2.ケース2:刑事裁判の長期化
刑事裁判が長期化した場合、民事裁判で判決が出るのが遅くなります。また、刑事裁判中、放火犯は仕事ができず資金不足に陥るため、賠償金が支払われないケースも多いです。賠償金よりも金額は少なくなりますが、放火犯が資金不足に陥る前に示談金を受け取りましょう。
2-2-3-1.ケース3:仕事が忙しくて裁判どころではない
損害賠償請求裁判は時間的負担が非常に大きいため、仕事にも差し支えます。仕事で時間に余裕がない方は、早めに示談を選択して、裁判にかかる時間から解放された方がいいでしょう。
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3.放火犯への損害賠償請求事例
実際に「賠償金の支払いが命じられた事例」と「賠償金の支払いが命じられなかった事例」をご紹介します。
3-1.賠償金の支払いが命じられた事例
賠償金の支払いが命じられた事例は下記の3つです。
3-1-1.事例1:静岡県の神社が放火された事例
2011年11月に未成年の少年3人が火遊びをしていて、神社の本殿が全焼しました。再建費用として、神社側が少年3人と少年らの親4人に1億2000万円の損害賠償請求をおこないました。親が監督責任を果たしていなかったと判断されて、少年らの親4人に対して、1億2000万円の支払いが命じられました。少年らの親の1人が保険に入っていたため、1億2000万円のうち1億円が保険会社から支払われました。
3-1-2.事例2:横須賀市のマンション一室が放火された事例
2002年7月に35歳の男性が66歳男性の自宅マンションから金品を盗んだ後に放火をしました。マンション一室が全焼をしました。被害者は放火犯に1050万円の損害賠償請求をおこないました。賠償責任が認められて、放火犯には1050万円の支払いが命じられました。
3-1-3.事例3:佐賀県の戸建てが放火された事例
2013年5月に54歳男性の自宅が放火をされて全焼しました。被害者は、放火犯に賠償金1400万円と精神的苦痛として慰謝料1000万円を請求する裁判をおこないました。賠償責任と精神的苦痛が認められて、賠償金1400万円・慰謝料400万円の支払いが命じられました。
3-2.賠償金の支払いが命じられなかった事例
放火犯に賠償責任はないと判決が出た事例を1つご紹介します。
3-2-1.さいたま市のマンションでベランダが放火された事例
2012年8月、隣人トラブルが原因で、精神病患者が隣部屋のベランダに火のついたティッシュを投げ込みました。被害はぼやで済みました。被害者は放火犯に対して賠償金150万円と精神的苦痛として慰謝料300万円を請求しました。しかし、精神病による自己管理能力の欠如が認められ、賠償金・慰謝料の支払いは命じられませんでした。親の監督責任も認められなかったため、賠償金と慰謝料は1円も支払われませんでした。
4放火犯に損害賠償請求する上での2つの注意点
放火犯に損害賠償請求する上で下記の2つの注意点があります。
1.放火犯が精神病を患っていた場合は損害賠償請求できない
2.賠償金を踏み倒す放火犯もいる
4-1.注意点1:放火犯が精神病を患っていた場合は損害賠償請求できない
放火犯に精神疾患が認められた場合、賠償責任はないと判断されます。放火犯から1円も賠償金を受け取れません。
ただし、親族の監督責任を果たしていないと判断された場合は、親族に賠償責任が生じます。親族に損害賠償請求をすれば、損害額の半額程度が賠償金として支払われます。
4-2.注意点2:賠償金を踏み倒す放火犯もいる
裁判所から命じられた賠償金を踏み倒す放火犯もいます。
放火犯に資金がなかったら、賠償金を支払えません。財産を差し押さえて支払い切れればいいのですが、支払いきれない場合は分割での支払いになります。そのため、放火犯に定期的な収入がない場合、支払いはストップして、最終的には踏み倒されてしまいます。
まとめ.一番得する方法で放火犯に賠償してもらう
放火犯が精神疾患を患っていない限り損害賠償請求ができます。
ただ、「賠償金が支払われるまでの期間」や「示談金額」「放火犯の出方」によっては示談にした方がいいケースがあります。状況をしっかり把握して、一番得する方法で放火犯に賠償してもらいましょう。
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