発生した火事の15%がもらい火(類焼)が原因です。
もらい火を受けた人はあくまで被害者です。普通に考えたら損害賠償請求したいところです。
しかし、日本の法律では、基本的に損害賠償請求をできません。損害賠償請求できるケースであっても条件が複雑なため、聞いても教えてくれる人はいないでしょう。
そこで今回は、「損害賠償できないケース」と「損害賠償できるケース」をご説明いたします。
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1.もらい火による火事後に損害賠償請求できるかどうかの基準:失火責任法
明治32年に制定された民法709条の失火責任法が適用されるかどうかが、もらい火した後に火元へ損害賠償請求できるのか決まります。
失火責任法の「概要」と「制定された背景」は下記の通りです。
1-1.失火責任法の概要
失火責任法とは、「火元の重過失による出火でない限り、火元は賠償責任を負わない」と定められている法律です。
失火責任法によって、もらい火による火事が起きても火元は賠償責任を負わないため、火元に損害賠償請求ができません。
なお、戸建だけに限らず、マンション・アパートでも失火責任法は適用されます。
※これ以降の説明をご覧になる上で重過失と認定される条件を知っておく必要があります。読み進める前にこちらをご覧ください。
分かりづらい!!重過失による火事と認定される条件とは?
1-2.失火責任法が制定された背景
明治時代以前の日本は、木造住宅が密集していました。当時は、消火技術が発達していなかったため、一つの家から出火したら、町全体が火事になることがしばしばありました。失火責任法制定以前は、火事になった町の人間は、火元に損害賠償請求をしていました。しかし、賠償金額は一個人の支払い能力を大きく超えているため、火元は賠償金を支払えません。火元は取り立てや嫌がらせを受けるようになります。取り立てや嫌がらせは、次第にエスカレートしていきます。火元の一家が吊るし上げにされたこともあったようです。火元への嫌がらせが酷かったため、政府は失火責任法を制定して、これらの問題を解決しました。
2.もらい火による火事後に損害賠償請求できないケース:失火責任法適用
火元の重過失が認定されなかった場合、失火責任法が適用されるため、火元に損害賠償請求はできません。
なお、重過失と認定される割合は1%未満のため、基本的には失火責任法が適用されます。
2-1.火元の重過失が認定されなかった場合の補償
火元に損害賠償請求をできないため、被害者は自分が加入している火災保険で損害をカバーしなくてはいけません。
万が一、火災保険に加入していない場合は、損害は1円もカバーされません。
火元が類焼損害補償特約を付帯していた場合は損害を補償されます!
もらい火による火事が!火災保険の補償範囲と補償額を徹底解説!
2-2.大規模火災でも火元に損害賠償請求ができなかった事例
2016年12月12日に、新潟県の糸魚川で大規模火災がありました。直近10年で最大の火事でしたが、火元に賠償責任は一切生じませんでした。
「被災状況」と「警察の見解」は下記の通りです。
2-2-1.被災状況
中華屋の店主がコンロの火の消し忘れが原因で、全焼120棟・半焼5棟・部分焼22棟が焼損しました。県外の消防隊を含む合計43隊で消火活動にあたり、消火までに10時間半もかかりました。死傷者は出ませんでしたが、消防隊員のうち1名が中等症の怪我・16名が軽症の怪我をしました。366世帯743人に避難勧告が発令されました。老舗旅館や銀行の支店、スーパーが消失してしまったため、町の機能は一時ストップしました。
2-2-2.警察の見解
コンロの火の消し忘れが原因なので、一見重過失があるように思えます。しかし、「大量の油を使用していたわけではないため、強い注意を払わない」「消し忘れは意識の範囲外」という理由で、失火責任法が適用されました。
3.もらい火による火事の損害賠償請求ができるケース:失火責任法適用外
失火責任法が適用されないケースは下記の2つです。いずれかのケースに当てはまった場合、火元に損害賠償請求ができます。
1.火元に重過失あり
2.ガス爆発
ガス爆発による火事に失火責任法が適用されない理由はこちらをご覧ください!
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3-1.失火責任法が適用されない2つのケースの賠償金
「火元に重過失がある場合」と「火元がガス爆発させた場合」でそれぞれ受け取れる賠償金は下記の通りです。
借主が賠償金を支払きれなかった場合は、連帯保証人が肩代わりします。
賃貸物件で火事が!連帯保証人はどこまで責任を負うの?
3-1-1.ケース1:火元に重過失ある場合の賠償金
火元に損害賠償請求をした場合、ご自身が加入している火災保険でカバーしきれなかった分の損害額を賠償金として受け取れます。
※損害賠償請求する際は、民事裁判をしなくてはいけません。
損害賠償請求裁判をする際の弁護士の選び方と費用はこちらを書いてください!
放火またはもらい火で火事が起きた方へ!弁護士の選び方と費用は?
3-1-2.ケース2:火元がガス爆発させた場合の賠償金
火元に損害賠償請求をした場合、ご自身が加入している火災保険でカバーしきれなかった分の損害額の30〜60%を賠償金として上取れます。「ガス爆発は不注意ではない」とされているため、重過失よりも賠償金は少ないです。
3-2.もらい火による火事の損害賠償請求ができた事例
もらい火による火事で損害賠償請求できた事例を3つご紹介します。
3-2-1.事例1:寝タバコが原因のもらい火で築5年・坪数30坪の家が全焼
寝タバコが原因だったため、火元の重過失が認定されました。
もらい火を受けた方は、隣家に1,577万円の損害賠償請求をしました。最終的には示談が成立して、火元から示談金600万円が支払われました。
3-2-2.事例2:火を点けたまま大量の油を放置したのが原因のもらい火で築17年・69坪の家が半焼
大量の油を使用しているのに火の注意を怠ったため、火元の重過失が認定されました。
もらい火を受けた方は、保険でカバーしきれなかった損害額440万円を損害賠償請求しました。火元には裁判所から390万円の支払い命令が下されました。
3-2-3.事例3:ストーブの近くに石油を放置したのが原因のもらい火で築31年・坪129坪の家が全焼
下記の2つの理由から、火元の重過失が認定されました。
1.ストーブの近くに石油を置くのは常識的に考えて危険
2.石油ボトルの蓋が開いていた
もらい火を受けた方は、隣家に1,310万円の損害賠償請求をしました。隣家が非常に高圧的な態度だったため、示談は不成立でした。火元には裁判所から1,040万円の支払い命令が下されました。
4.放火が原因のもらい火による火事は犯人に損害賠償請求できる!
隣家が放火されたのが原因でもらい火を受けた場合、犯人に損害賠償請求ができます。火事によって受けた損害額に加えて、心理的恐怖を感じたとして慰謝料の請求もできます。
※隣家には損害賠償請求できませんのでご注意ください。
放火犯への損害賠償請求はこちらをご覧ください!
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まとめ.重過失の有無でもらい火による火事の損害賠償請求ができるのか決まる
もらい火による火事の損害賠償請求ができるかどうかは、主に火元の重過失が認められるのかどうかで決まります。
火元の重過失が認められなかった場合は一切損害賠償請求できません。一方で、火元の重過失が認められた場合は損害賠償請求ができるため、損害額が大きいのであれば民事裁判の準備を始めましょう。
また、ガス爆発や放火が原因のもらい火は、確実に損害賠償請求ができます。
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