もらい火による火事の補償は、「火元の保険内容」と「あなたの保険内容」によって異なります。

 

火元が火災保険に加入していなかったら、あなたの保険の範囲内で補償がされます。「補償範囲」と「補償額」は、あなた自身が火事を起こした時と変わりません。

しかし、火元が下記の3つのうちいずれかの特約を付帯した火災保険に加入していた場合、火元の保険会社があなたの受けた損害の一部または全額を補償します。「補償範囲」と「補償額」は特約によって変わります。

1.失火見舞費用保険金

2.類焼損害補償特約

3.個人賠償責任特約

 

そこで今回は、火元が上記の3つの特約を付帯した火災保険に加入していた場合、あなたが受けられる補償の「補償範囲」と「補償額」を徹底解説いたします。

また、補足情報として、下記の2つも解説いたします。

1.3つの特約のいずれかに損害を補償された人の体験談

2.火災保険に加入していなかった火元が重過失を認められた場合の「補償範囲」と「補償額」

 

※あなた自身が火事を起こした時の「補償範囲」と「補償額」はこちらをご覧ください！

火事が起きた！火災保険の補償範囲と補償額を焼損別に徹底解説！

 

1.もらい火よる火事を補償する3つの火災保険特約

火元の保険会社がもらい火によって受けた損害を補償する3つの特約の「概要」「補償範囲」「補償金」をご説明いたします。

1.失火見舞費用保険金

2.類焼損害補償特約

3.個人賠償責任特約

 

1-1.失火見舞費用保険金

失火見舞費用保険金の「概要」「補償範囲」「補償金」は下記の通りです。

 

1-1-1.概要

火元の保険会社がもらい火で被災した方にお見舞金を支給する特約です。

 

1-1-2.補償範囲

用途が制限されていないため、「原状回復費」「引っ越し費用」「疲れを癒す旅行代」など、好きなように使えます。

 

1-1-3.補償額

火元が契約している保険金の30％を上限に、被災した世帯につき30万円が支給されます。

「30万円×被災した世帯数」が「火元が契約している保険金の30％」を上回る場合、「火元が契約している保険金の30％÷被災した世帯数」がお見舞金として支給されます。

 

1-2.類焼損害補償特約

類焼損害補償特約の「概要」「補償範囲」「補償金」は下記の通りです。

 

1-2-1.概要

あなたの保険でカバーしきれなかったもらい火による火事の損害を火元の保険会社が補償する特約です。

※損害額の計算方法はこちらをご覧ください！
誰にでも分かる！火災損害額の算定方法とは？

 

1-2-2.補償範囲

あなたの契約していた保険金がどれだけ低かったとしても、カバーしきれなかった損害は火元の保険会社に補償されます。

もし、あなたが火災保険に加入していない場合は、火元の保険会社が損害額を全額補償します。

 

1-2-3.補償額

「あなた」と「火元」の保険会社それぞれに保険金請求手続きをすれば、もらい火による損害は全額補償されます。

例えば、損害額2,000万円・あなたの保険会社からの保険金1,400万円の場合、火元の保険会社から600万円が支給されます。

 

1-3.個人賠償責任特約

個人賠償責任特約の「概要」「補償範囲」「補償金」は下記の通りです。なお、注意点もご説明いたします。

 

1-3-1.概要

火元の重過失が認められた際、火元が支払わなくてはいけない賠償金を火元の保険会社が肩代わりする特約です。

 

1-3-2.補償範囲

「あなたの保険会社でカバーしきれなかった損害」と「あなたの保険会社が支給した保険金」が火元の保険会社に補償されます。

 

1-3-3.補償額

「あなた」と「火元」の保険会社それぞれに保険金請求手続きをすれば、もらい火による損害は全額補償されます。

 

1-3-4.個人賠償責任特約の注意点

火元の重過失が認められなければ、個人賠償責任特約を使用できません。重過失を認めさせるには、民事裁判をおこなわなくてはいけません。

 

重過失と認定される条件はこちらをご覧ください！
分かりづらい！！重過失による火事と認定される条件とは？

 

2.もらい火による火事の損害を補償された人の体験談

火元が保険に付帯していた「失火見舞費用保険金」「類焼損害補償特約」「個人賠償責任特約」のいずれかによって、損害を補償された人の体験談をそれぞれご紹介します。火元の保険会社からどの程度保険金が支給されたのかご確認ください。

 

2-1.失火見舞費用保険金を受けた人の体験談

体験談投稿者：森和子様　55歳　福島県

「隣家からの延焼で外壁の塗装が剥がれてしまいました。仕方ないことですから我が家の保険で修繕をしようとしていたところ、火災発生から2週間後くらいに隣家の保険会社からお見舞金30万円が振り込まれました。そのお金で塗装費用を賄えたので、その後の保険料が上がらずに済みました。」

 

2-2.類焼損害補償特約で補償された人の体験談

体験談投稿者：矢島正様　41歳　福岡県

「隣の家から火が燃え移ってしまったせいで、家が半焼してしまいました。普通に保険金請求申請をおこないましたが、500万円しか保険金が下りませんでした。どうやら補償範囲の狭い保険に加入していたみたいでした・・・。そんなとき火元の方から『もらい火した方の補償をする特約に入っていた』という話をお聞きしたので、使わせていただきました。その結果、追加で800万円ほど保険金を受け取れたため、実費での持ち出しがグッと減りました。」

 

2-3.個人賠償責任特約で補償された人の体験談

体験談投稿者：有川浩司様　49歳　東京都

「お隣さんからの火で、家が全焼してしまいました。私自身でも火災保険に加入していたのですが、保険料を抑えていたため、1,200万しか保険金を受け取れませんでした。建て替え工事には2,300万円程度必要でしたから、借金をして家の建て替えをしました。火災が発生してから半年くらい経った後、お隣さんの重過失が認められて書類送検されたことを耳にしました。お隣さんが個人賠償責任特約に入っているということでしたので、形式上の民事裁判を起こして、お隣さんの保険会社からカバーされなかった損害額700万円が支給されました。借金も一気に減ったので、本当に良かったです。」

※全焼した場合、「損害額＝火災直前の建物評価額」になるため、「自分」と「火元」の保険会社から受け取る保険金の合計は、建て替え工事費用総額には及びません。

 

3.【火元：保険加入なし・重過失あり】もらい火による火事の補償範囲と補償額

「補償範囲」「補償金」は下記の通りです。

 

3-1.補償範囲

あなたの保険会社でカバーしきれなかった損害額を火元が実費で補償します。あなたが保険に加入していなかった場合は、損害額を火元が実費で全額補償します。

 

3-2.補償額

下記の2つをおこなうと、もらい火による損害は全額補償されます。

1.あなたの保険会社に保険金請求手続きをする

2.あなたの保険会社でカバーしきれなかった損害額を火元に請求する

 

3-3.損害賠償請求する際の注意点

損害賠償請求する際の注意点が2つあります。

 

3-3-1.注意点1：支払い命令が出るまで1年かかる

損害賠償請求するには、民事裁判をおこなわなくてはいけません。火元の重過失の有無を問う裁判は、刑事裁判で判決が出た後に通常おこなわれます。そのため、賠償金の支払い命令が出るまで、1年程度かかります。

 

3-3-2.注意点2：賠償金の支払いをすっぽかされる可能性がある

賠償金の支払い命令が出たとしても、火元が資金を持っていなければ支払ません。賠償金が支払われなければ、火元の財産を差し押さえます。ただ、それでも支払い切れなかった場合、分割での支払いになります。分割での支払いは双方の合意で決められるため、火元の人間性に問題があった場合、すっぽかされてしまいます。

 

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4.もらい火による火事の補償範囲と補償額は特約によって異なる

もらい火による火事の場合、火元が保険に付帯している特約によって、火元の保険会社から受けられる補償の「補償範囲」と「補償額」が変わります。「失火見舞費用保険金」だったら一部しか補償されませんが、「類焼損害補償特約」が付帯されていたら、損害額は全額補償されます。火元が付帯している特約を確認して、万全の補償を受けましょう。

 

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